「チューイングボーン」大山尚利(角川ホラー文庫)★★★
年末に読んでまだ感想書いてない本が何冊もあるから、頑張って追いつかなきゃ。
- 作者: 大山尚利,山西隆則
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/11/10
- メディア: 文庫
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僕がビデオを回すたび、人が死ぬ? 第12回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
原戸登はゼミの同級生の女性に列車の最前列から三度、外の風景を撮影してほしいと頼まれる。登は一度ならず二度までも列車に人間が衝突する場面を撮影してしまう。そして三回目。更なる事態が登を襲う…。(Amazon紹介文より)
第12回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。最前列からの風景をただ撮ってくれるだけでいいというおいしいバイトを引き受けた主人公が、必ず目の前で人身事故に遭遇する恐怖。主人公の心にひたひたと忍び寄る得体の知れない恐怖をうまく描いてはいるものの、幾度となく人身事故の場面が続くうちに展開がだんだん単調となり、冒頭の衝撃がしだいに薄れていくのが難点。それでも「どんなスーパーナチュラルなラストが用意されてるのだろうか?(どう落とし前を付けるのか?)」との期待から最後まで読み進んだが、現実的でいかにもありえそうな着地点だったことは、かなりのマイナスポイントか。
とはいえ、惨劇にたびたび出会ううちに、主人公の精神がじわじわと壊れていくさまは丹念に描かれており、これが処女作とは思えない力量も感じられ、私としては案外この作品を気に入っている。今後にも期待が持てそうなので、とりあえずこの作者の評価は第二作待ちとしたい。( 読了:2005.11.27、評価:★★★ )