「超弦領域 − 年刊日本SF傑作選」大森望、日下三蔵 編
遅ればせながら「超弦領域」考課表をば。
- 作者: 日下三蔵,大森望
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/06/25
- メディア: 文庫
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「ノックス・マシン」法月綸太郎…… +2
「エイミーの敗北」林巧…… -1
「ONE PIECES」樺山三英…… -2
「時空争奪」小林泰三…… +2
「土の枕」津原泰水…… +3
「胡蝶蘭」藤野可織…… -2
「分数アパート」岸本佐知子…… +1
「眠り課」石川美南…… +0
「幻の絵の先生」最相葉月…… +3
「全てはマグロのためだった」Boichi…… +0
「アキバ忍法帖」倉田英之…… +0
「笑う闇」堀晃…… +1
「青い星まで飛んでいけ」小川一水…… +2
「ムーンシャイン」円城塔…… +1
「From the Nothing, With Love」伊藤計劃…… +0
「虚構機関」よりもトータルとしてのレベルは高いと思うが、各作品のレベル差は逆に大きくなっているような気が。あと、短篇SFマンガの低調は前回に続いて深刻。SFマガジンで数ヶ月に一度でいいから作品を掲載するようにすれば、水準作がコンスタントにストックできると思うんだけど、どうでしょう?
「+3」を付けたのは「土の枕」と「幻の絵の先生」。どちらも出色の出来だが、最高点を付けた2作がいずれも非SFというのは我ながらいかがなものか。あと「ノックス・マシン」「時空争奪」「青い星まで飛んでいけ」あたりが傑作。虚数ならぬ虚構人格としてのNo Chinamanって発想凄すぎ。
これらの作品の水準の高さに比べ、「エイミーの敗北」や「ONE PIECES」が年度代表として選ばれてるのはひたすら謎。「胡蝶蘭」が考課表の中で評価が高いのも不思議だ。特に目新しいストーリーでもないと思うのだが…。
「全てはマグロのためだった」は、どうしても「HOTEL」と比較してしまうので点が辛くなるが、「著者のことば」だけならば文句なしの+3。「アキバ忍法帖」は、まあ面白かったからよしとしよう(笑)
「分数アパート」は吾妻ひでおの「不条理日記」をふと思い出した。大変好み。もっと読みたいなぁ。
ほそいたけおさんによる本書の考課表まとめはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/foreignsfsite/20090730/p2
「大聖堂」ケン・フォレット
- 作者: ケン・フォレット,矢野浩三郎
- 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
- 発売日: 2005/12/17
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- 作者: ケン・フォレット,矢野浩三郎
- 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
- 発売日: 2005/12/17
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- 作者: ケン・フォレット,矢野浩三郎
- 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
- 発売日: 2005/12/17
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★★★★★★
いや、18年ぶりの続編じゃなくて正編の方(笑)
続編刊行につられて初めて読みましたが、今まで読まなかったことをどれほど悔やんだことか。ここ5年間くらいに読んだ小説では間違いなくベストだし、自分にとってのオールタイムベストにも当確。600ページ超の文庫上中下3冊、久々に読み終えるのが惜しくて仕方ないほど至福の時を過ごすことができました。
中世のイギリスを舞台に、田舎の小さな修道院が大聖堂を建てるというただそれだけのお話を、こんなにまで心に深い感動をもたらす素晴らしい物語に仕立て上げるなんて…。もう感無量ですね、何も言えません。登場人物の一人一人が生き生きといつまでも心に残る珠玉の名作。
大ベストセラーなので今さらストーリー紹介はしませんが、ほんとまだ読んでない人は幸せですよ。★5つでも足りないので、異例の★6つということで。
「弥勒の掌」我孫子武丸
- 作者: 我孫子武丸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/03/07
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★★★☆
妻を殺された刑事と、失踪した妻を探す高校教師。謎を追う二人の前に浮かび上がる怪しげな宗教団体。やがて、事件は驚愕の真相へ…。
最近、フェアの帯付きで平積みされてたり、書店がさりげなく仕掛けようとしてる本書。なるほど、乾くるみや道尾秀介がバカ売れしてることから考えると、確かにこの作品はうまくやればベストセラーになりそう。驚天動地の結末とか散々聞かされてたから身構えて読んだのに、それでも「あっ!」と驚く予想外の結末でしたから。お見事の一言。
でも、最近はこの手の作品を読んでも、以前ほど楽しめなくなってきてる気がする。確かに読んでる時はトリックや謎解きに驚いたり感心したりして、けっこう満足してるんだけど、あとにあまり何も残らないというか…。「造花の蜜」や「完全恋愛」を読んだ時も、傑作だということはわかるんだけど、手放しで絶賛できない感じ。う〜ん、謎解きミステリを面白く感じないっていうのは、自分としてはちょっとやばいかも…。
いよいよ「SF本の雑誌」が出るぞ
「SF系日記更新時刻R」から飛んできた人はみんな知ってるネタなので(笑)、それ以外の方へ。
- 作者: 本の雑誌編集部
- 出版社/メーカー: 本の雑誌社
- 発売日: 2009/07/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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物議を醸した「この10年のSFはみんなクズだ!」をはじめ、今までのSF系特集をあれもこれも再録だとか。
う〜ん、こないだの「本の雑誌バックナンバーフェア」で、昔持ってたSF特集の号をいっぱい買い直したのは何だったのか? うう…(泣)
目次もアップされてます。
http://www.webdoku.jp/kanko/yoyaku.html
「本の雑誌が選ぶ◎SFオールタイムベスト100」が楽しみ。まあ、本の雑誌なので、ありきたりのベストじゃないだろうなぁ。
「翻訳SF担当編集者座談会「海外モノに大コケなし、バカ売れもまず(笑)なし!」」ってのも興味深々(笑)
「ルナ・ゲートの彼方」ロバート・A・ハインライン
- 作者: ロバート・A.ハインライン,森下弓子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1989/03/18
- メディア: 文庫
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★★★★☆
恒星間ゲートを利用した超時空ジャンプで未知の惑星に生徒を送り込み、無事生き残れたら合格という命を懸けたサバイバルテスト。予想外の事故で惑星に取り残された主人公たちを襲う様々な危機、仲間との諍い、権力闘争。やがて苦難を経て自治国家にまで成長した彼らの社会に、唐突に試練が訪れる…。
帯に「ひどいよ、ハインライン…。こんなのあり?」と大森望さんが書かれているが、まさに言い得て妙。少年や少女たちが経験する過酷な運命に感情移入し、彼らが必死になって国家を築き上げていく様に心打たれ、このまま感動のドラマとして幕を閉じるかと思いきや…。
今まで小説を読んできて、やりきれないラストとか悲惨な結末とかは散々経験してきましたが、こんな身も蓋もない結末は初めて。もう呆然ですわ。丹念に紡ぎ上げたストーリーにこんな結末をつけるなんて、ハインラインひどすぎ(笑)
とまあ、なんか文句ばっかり書いてるみたいですが、それでもなおこの小説は傑作中の傑作。少年たちの苦闘と成長の物語としても、また手に汗握る冒険SFとしても一級品。リーダビリティは高いし、読み出したらやめられないほど面白いので、読んでない人はぜひ。
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」スティーグ・ラーソン
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/12/11
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利
- 出版社/メーカー: 早川書房
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★★★★★
全世界で800万部突破とか、発表前に作者が急逝とか、池上冬樹氏や大森望氏が大絶賛とか、そんな鳴り物入りの登場だったので半信半疑で読みましたが、いや〜、噂に違わず面白いのなんの!
罠に嵌められ窮地に陥った社会派雑誌「ミレニアム」の発行人ミカエルが、40年前に密室状態の孤島から女性が失踪した事件の調査を依頼されるが、そこにはとてつもない謎と驚愕の真相が隠されていて…っていうストーリー。
行方不明のハリエットをわずかな証拠から探し出していく謎解きや、大物実業家と出版社の対立や駆け引き、陰謀の数々は面白く、これだけでも年間ベスト級なんだけど、本書をそれ以上に傑作たらしめているのは、全身をタトゥーとピアスで飾った女性調査員リスベット・サランデルの強烈な個性。社会性が完全に欠如した性格、妙齢なのに少女のような体躯、それでいて調査能力は超人的に優秀、でも誰にも心は開かない。そんな心を閉ざした彼女と主人公ミカエルが出会い、少しずつ心を通わせながらタッグを組んで難局に挑んでいくさまがすごくいい。
本書は3部作の第1部だけど、第2部はさらに面白さに磨きがかかっているとのこと。これは第3部までしばらく楽しめそう。年間ベスト級と噂の「ユダヤ警官同盟」が出たとこだけど、第3部でこけないかぎり今年の賞レース、海外ベストはこの「ミレニアム」でまず決まりでしょうね、ふふふ。