しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「ルナ・ゲートの彼方」ロバート・A・ハインライン

ルナ・ゲートの彼方 (創元推理文庫)

ルナ・ゲートの彼方 (創元推理文庫)

★★★★☆

恒星間ゲートを利用した超時空ジャンプで未知の惑星に生徒を送り込み、無事生き残れたら合格という命を懸けたサバイバルテスト。予想外の事故で惑星に取り残された主人公たちを襲う様々な危機、仲間との諍い、権力闘争。やがて苦難を経て自治国家にまで成長した彼らの社会に、唐突に試練が訪れる…。

帯に「ひどいよ、ハインライン…。こんなのあり?」と大森望さんが書かれているが、まさに言い得て妙。少年や少女たちが経験する過酷な運命に感情移入し、彼らが必死になって国家を築き上げていく様に心打たれ、このまま感動のドラマとして幕を閉じるかと思いきや…。

今まで小説を読んできて、やりきれないラストとか悲惨な結末とかは散々経験してきましたが、こんな身も蓋もない結末は初めて。もう呆然ですわ。丹念に紡ぎ上げたストーリーにこんな結末をつけるなんて、ハインラインひどすぎ(笑)

とまあ、なんか文句ばっかり書いてるみたいですが、それでもなおこの小説は傑作中の傑作。少年たちの苦闘と成長の物語としても、また手に汗握る冒険SFとしても一級品。リーダビリティは高いし、読み出したらやめられないほど面白いので、読んでない人はぜひ。