しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「超弦領域 − 年刊日本SF傑作選」大森望、日下三蔵 編

遅ればせながら「超弦領域」考課表をば。

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

「ノックス・マシン」法月綸太郎…… +2
「エイミーの敗北」林巧…… -1
「ONE PIECES」樺山三英…… -2
「時空争奪」小林泰三…… +2
「土の枕」津原泰水…… +3
胡蝶蘭藤野可織…… -2
「分数アパート」岸本佐知子…… +1
「眠り課」石川美南…… +0
「幻の絵の先生」最相葉月…… +3
「全てはマグロのためだった」Boichi…… +0
「アキバ忍法帖倉田英之…… +0
「笑う闇」堀晃…… +1
「青い星まで飛んでいけ」小川一水…… +2
「ムーンシャイン」円城塔…… +1
From the Nothing, With Love伊藤計劃…… +0


「虚構機関」よりもトータルとしてのレベルは高いと思うが、各作品のレベル差は逆に大きくなっているような気が。あと、短篇SFマンガの低調は前回に続いて深刻。SFマガジンで数ヶ月に一度でいいから作品を掲載するようにすれば、水準作がコンスタントにストックできると思うんだけど、どうでしょう?

「+3」を付けたのは「土の枕」と「幻の絵の先生」。どちらも出色の出来だが、最高点を付けた2作がいずれも非SFというのは我ながらいかがなものか。あと「ノックス・マシン」「時空争奪」「青い星まで飛んでいけ」あたりが傑作。虚数ならぬ虚構人格としてのNo Chinamanって発想凄すぎ。

これらの作品の水準の高さに比べ、「エイミーの敗北」や「ONE PIECES」が年度代表として選ばれてるのはひたすら謎。「胡蝶蘭」が考課表の中で評価が高いのも不思議だ。特に目新しいストーリーでもないと思うのだが…。

「全てはマグロのためだった」は、どうしても「HOTEL」と比較してしまうので点が辛くなるが、「著者のことば」だけならば文句なしの+3。「アキバ忍法帖」は、まあ面白かったからよしとしよう(笑)

「分数アパート」は吾妻ひでおの「不条理日記」をふと思い出した。大変好み。もっと読みたいなぁ。


ほそいたけおさんによる本書の考課表まとめはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/foreignsfsite/20090730/p2