しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「さあ、気ちがいになりなさい」フレドリック・ブラウン(異色作家短篇集2)(早川書房)★★★

異色作家短篇集第2巻。1巻目のロアルド・ダール「キス・キス」(→感想)と比べると少し落ちる気がするが、それは「キス・キス」収録のどの短篇も今なお新鮮で鮮やかな印象を与えてくれるのとは対照的に、本書に収められた短篇は昔のSFや奇妙な味わいの小説によく見られる単純明快でシンプルな構造のものが多く、読んでいてかなり古めかしさを感じるせいだと思う。
とはいえ、電気が使えない世の中に逆行していく「電獣ヴァヴェリ」が示す古き良き時代への郷愁、実在しない小人がなんでもやってくれる「ユーディの原理」のバカバカしさ、そして極めつけ、前世はナポレオンだったと言い張ることにより気ちがいの振りを続ける主人公が、やがて知る驚愕の真実(この世の成り立ち)を描いた「さあ、気ちがいになりなさい」など、面白いものも多く、最後まで楽しんで読むことができた。ただ、今の時代に初めて読んだ感想としては、巻末の解説で坂田靖子が興奮し絶賛するほどではないように思う。(評価:★★★)