しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「狼の一族(アンソロジー/アメリカ篇)」若島正/編(早川書房)★★★☆

異色作家短篇集第18巻は今回の再刊に合わせ新たに編纂された作品集で、本作は全3巻のうちの第1弾、アメリカ篇。若島さんが本邦未訳作品縛りという厳しい制約のなか選んだということで期待してましたが、まずまず満足な出来。

私が特に気に入ったのは、正統派の怪談ながら妙に心に残るフリッツ・ライバー「ジェフを探して」、二転三転の展開が楽しいジャック・リッチー「貯金箱の殺人」、南の島で男を襲う悲劇を描いたチャールズ・ウィルフォード「鶏占い師」、巨大な貝と心を通わす少年の最高に変な物語、R・A・ラファティ「浜辺にて」あたり。もちろん、その他の作品も面白く、こうした有名作家の未訳短編にまだまだこんな面白い作品がいっぱいあるという事実に驚かされる。う〜ん、もったいないなぁ。異色作家短篇集アンソロジー全3巻の発刊を記念して、SFマガジンの5月号と6月号の2号連続で特集が組まれるみたいなので、こうした動きは素直にうれしい。

それほど好きになれない作品もいくつかあるため総合点として星3つ半としたが、全体として楽しめる内容だったので、続く「イギリス篇」「世界篇」も期待大。(評価:★★★☆)