しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「百万円と苦虫女」


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短大卒業後バイト生活に明け暮れる鈴子は、友人とのルームシェアをめぐる事件に巻き込まれ、家族のもとを離れ放浪の生活を送る破目になる。100万円溜まるたびに職を変え、別の土地に移り住む、人付き合いが苦手な鈴子。そんな彼女が、人との触れ合いを通して変わっていくさまを描いた、派手さはないけどちょっと素敵な作品。

とにかく、一にも二にも蒼井優が素晴らしすぎ。人との関わりが苦手な若い女性を演じたらピカイチでは? 相手役の森山未来も同じタイプの役者なので、この二人のぎこちない会話のリアリティには唸らされる。冒頭、鈴子が転落していくきっかけとなった事件に至るまでのつかみはうまいし(ほんと、人間って何がきっかけで人生狂わされちゃうかわからないってのが、よくわかります…)、いじめにあう弟と鈴子の交流はちょっとくさいところもあるけど泣かせるし。ほとんど田舎が舞台の物語にもかかわらず、蒼井優のはかなげな風情と相俟って、独特の空気と透明感を持った映画に仕上がっているのもいい。

そして何より私が感心したのが映画のラスト。まさかこう来るとは。TVの連続ドラマだと、絶対にこんなラストにはならないと思うので、それだけでもこの映画の非凡さが際立つと思う。う〜ん、好きだなぁ、こういうの。

ストーリー的に難はあるし、注文を付けたいところもなくはないけど(何でそんなにすぐお金が溜まるねん!とか)、それを補って余りある魅力がいっぱいなので、現時点では今年観た邦画の第1位。まあ、このあと「ぐるりのこと。」か「純喫茶磯辺」を観たら順位が変わるかもしれませんが。
それにしても蒼井優って細いなぁ。胸も在るか無きかだし、まさに私のストライクゾーン直撃で、そういう意味からも傑作と言えるかも(笑)