しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「リピート」乾くるみ(文藝春秋)

いやー、これは面白いぞ!

リピート

リピート

Amazonで購入

もし、現在の記憶を持ったまま十カ月前の自分に戻れるとしたら――。この夢のような「リピート」に成功し、人生の「やり直し」に臨もうとしている、年齢も職業もバラバラの十人の男女。彼らは一人、また一人と、次々と不審な死を遂げていきます。誰が「リピーター」を殺しているのか?
家族にも警察にも相談できないまま、独自の捜査を行う彼らが辿りついた衝撃の真相とは――。ミステリ界の鬼才が、永遠の名作『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ傑作の登場です。(出版社からのコメントより)

傑作「イニシエーション・ラブ」の影に隠れて、本書はそれほど話題にならなかったように思うが、どうしてどうして、こっちの方がひょっとしたら面白いかも! いやー、はっきりいって、それほど期待しないで読み始めた分、十二分に楽しむことができた。SFとして読んだらたいしたことないけど、謎解きミステリとして読めば傑作。
10ヶ月前の自分の頭の中に意識だけが「時間旅行」でき、人生をやり直せるという設定は、グリムウッドの名作「リプレイ」の焼き直しだから目新しさはないが、本書の特異な点は、何度も「リピート」を繰り返している人物が、9人の人間を誘ってチームを組んでリピートをする点。自分一人でリピートをすればすむものを、なぜわざわざ煩わしいことをするのか?
もう一つ本書の最大の目玉は、「リピーター」が次々に不審な死を遂げていく、その真相。一体、誰が「リピーター」を殺しているのか? リピートの事実を知り嫉妬に駆られた第三者か、はたまた「リピーター」の中の誰かなのか? すれっからしのミステリ通の人は謎解きに成功したかもしれないけど、私はこの真相にはさすがに気が付かなかった。【「誰が」殺したか?】ではなく、【「なぜ」殺されたか?】という発想で迫らないと真実に行き着かないのだが、普通、こんなこと考えつきませんって。
いやー、「イニシエーション・ラブ」に続いて、またまた一本取られてしまいましたわ。【まったく救いのない】ラストも私の大の好み。できれば、「イニシエーション・ラブ」がまったくダメだったという人も、全然違うタイプの小説なので、拒絶反応を示したりせず、騙されたと思って本書は読んでほしい。SFミステリの傑作なので、ぜひぜひ!(評価:★★★★)