しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「グランド・フィナーレ」阿部和重(講談社)

グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレ

第132回芥川賞受賞作。うーん、世間では主人公の幼女性愛がけっこうクローズアップされてますが、確かに主人公が「小さな女の子の人格とか気持ちに心が及ばない(単に自分の性的嗜好の対象物としか見ていない)」って点はまあまあうまく書けてるし、だからこそ「I」の悲痛なセリフが心に突き刺さるんだけど、でもまだまだこれってステレオタイプの域を出てないと思う。少なくとも、文学作品として芥川賞まで受賞する作品なんだったら、幼女嗜好だろうが変態性欲だろうが何をテーマにしてもいいけど、もっと読む者に「はっ!」と驚きを感じさせるような出来事とか主人公の心の動きとか、何か非凡さを感じさせてくれなくては、と思いますね。
あと余談だけど、こんな物語から抜け出してきたような清廉な2人の少女とともに多くの時間を密室ですごしてるにもかかわらず、主人公冷静すぎ(笑) いくら、以前に比べて相手の人格を慮るまでに少しは成長したにせよ、趣味嗜好はそんなに激変しないから、もう少し「はぁはぁ」しないとなんだか嘘っぽく感じてしまうのは私だけ?(笑)(評価:★★☆)