しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「影のオンブリア」パトリシア・A・マキリップ(ハヤカワ文庫FT)

影のオンブリア (ハヤカワFT)

影のオンブリア (ハヤカワFT)

オンブリア―それは世界でいちばん古く、豊かで、美しい都。そこはまた、現実と影のふたつの世界が重なる街。オンブリアの大公ロイス・グリーヴの愛妾リディアは、大公の死とともに、ロイスの大伯母で宮廷を我が物にしようとたくらむドミナ・パールにより宮殿から追いやられる。だがそれはふたつの都を揺るがす、怖るべき陰謀の幕開けにすぎなかった…2003年度世界幻想文学大賞に輝くマキリップの傑作ファンタジイ!(裏表紙紹介文より)

もうあちこちで大絶賛のマキリップ待望の新刊ですが、うーん、私にファンタジー属性がないためか、今ひとつのめり込めませんでした…。地下に折り重なるように存在する過去のオンブリア(影)と、陰謀渦巻く地上のオンブリア(現実)が境界すら定かでなく存在する世界…という設定は幻想的で美しいし、そのイメージ喚起力は驚異的で思わずため息が出るほどなんですが、いかんせん、物語がぐいぐい動いていかない点が不満なんですよねー。カイエルはいつまでも暗くいじけてるし、デュコンは絵ばっかり描いてふらふらしてるし…。特にデュコンに対しては「はよ行動せえよ!」といらいらしっぱなし。ドミナ・パールとフェイもキャラクター立ちまくりなんだから、もっと壮絶なバトルを見たかったなぁ…って思うし。マグだって、あんなに愛くるしいキャラクターなんだから「荊の城」のスウくらい、もっともっと物語の中心になって動き回ってほしかったなぁ。
というわけで、設定もキャラクターも大のお気に入りなのに、今ひとつ欲求不満が残ってしまった作品でした。うーん、次に読もうと思ってた「妖女サイベルの呼び声」も、読むかどうか思案のしどころですねぇ…。(評価:★★★)