しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「願い星、叶い星」アルフレッド・ベスター(河出書房新社)

えっと、サイト更新をしばらく休んでたあいだに読んだ本や観た映画の感想をぼちぼちと。

昨年の京フェス企画「ベスト短編SF2004」に参加したさい、あちこちのSF短編集から新訳作品だけ「つまみ食い」ならぬ「つまみ読み」し、そのままほったらかしにしてた本が何冊もあるんだけど、本書もそのうちの1冊で、ようやく通読することができた(いや、他にも7冊ほど同じような「読みかけSF短編集」があるんですが、まあそれはそのうち…)。

一読しての印象は、やはり50年以上前に書かれただけあって、古さを感じる作品が多いなぁというもの。終戦から数年後、1950年代前半に書かれた作品が多いためか、いくつかの短編にヒロシマに落とされた原爆のことが触れられていたり、核の恐怖が作品に色濃く反映していたり、と時代を感じさせる。

本書収録作では冒頭の「ごきげん目盛り」の評価が圧倒的に高いが、私はそれほど面白いと思わない。むしろ、恐ろしいまでの超能力を身に付けた少年少女をブラックユーモアにくるんで描いた表題作「願い星、叶い星」や、人生を自分の思う形に「創造」できる権利を得た男女の悪夢を執拗に描いた(ちょっと長くてしつこいけど)中編「地獄は永遠に」の方が楽しんで読むことができた。
とはいえ、全体的に「え、そんな終わり方なの?」と肩すかしを喰らう、少々物足りない印象の作品が多いため、それなりに楽しく読めたんだけど短編集としての評価は今ひとつといったところか。(評価:★★★)