しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「エヴァ・ライカーの記憶」ドナルド・A・スタンウッド

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

★★★☆

豪華客船タイタニック号の沈没、タイタニックの惨禍から生き残った夫婦の惨殺事件、そして大富豪ライカーによるタイタニック号引き揚げ計画。時を隔てた三つの事件が複雑に絡み合う、内容てんこ盛りの本書、26年ぶりに復刊ということで、そのノンストップのアクションと謎解き、権謀術数の数々の面白さが話題だけど、私としては正直、ちょっと期待が大きすぎたような…。

確かに前半、陰謀に巻き込まれていく主人公ノーマンの活躍は読んでて面白いけどちょっと出来すぎな感じで、展開される内容ほどハラハラドキドキしないし、謎解きもタイタニック号沈没パートの中で唐突に明かされるものが多く、伏線に基づくものではないため驚き度合いは低いし。タイタニック号沈没を克明に描いた謎解きパートは引き込まれましたが。

とはいえ、これはあくまで多大な期待に見合わなかったというだけで、冒険とサスペンスと謎解きを巧みにブレンドしたエンタメの佳品であることは確か。大多数の人が大絶賛なので、読んで損はない…はず。

#ただ、557ページで本体1,400円ってちょっと高すぎ。他所の文庫だったらせいぜい1,000円くらいでは…。