「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/06/08
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 41回
- この商品を含むブログ (132件) を見る
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/07/06
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (109件) を見る
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/08/06
- メディア: 新書
- クリック: 24回
- この商品を含むブログ (110件) を見る
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。 (Amazon紹介文より)
★★★
読んだのは、講談社ノベルス版全3巻(ええ、ええ、また積ん読してる間に文庫が出たんですよ、ふぅ…)。
辻村深月を読むのは初めて。メフィスト賞受賞作ってことでバリバリの新本格だと思ったら、SFというかファンタジーだった…。ある雪の日、学校に閉じ込められた8人のうちの誰かが、実は学園祭の日に自殺した生徒であり、この学校はその自殺した生徒の心が作り出した仮想空間だという。じゃあ、自殺して自分たちを閉じ込めたのは、この8人のうちの誰なのか?
こう書くと、犯人当ての謎解きミステリみたいに聞こえるけど、なんせ設定は超自然現象なんでもありだし、謎解きのための伏線があるわけでもなく、ただ順番に死んでいくだけ。生徒一人一人が心の傷に向き合っていく過程がつぶさに描かれてるのはいいんだけど(で、確かにこの辺りの描き込みのうまさは認めるものの)、全3巻はあまりに長すぎる…。このストーリーだったら1冊半か、長くても2冊で十分じゃないか? あと、主人公である辻村深月(作者と同姓同名)のキャラクターが、やたらとみんなにかばってもらいまくりの弱々キャラで、どうしても感情移入できない。
なんか、けなしてばかりみたいだけど、気に入ったとこもある。この作品のメインの謎はあくまで「自殺したのは誰か?(この時の止まった校舎という空間を作り出したのは誰か?)」なんだけど、この謎解きよりも私はもう一つの小さな謎、「この事件に深く関わっているはずの教師である榊は、なぜこの校舎に8人とともに閉じ込められなかったのか?」の真相の方に「あっ!」と驚かされた。あと、生徒一人一人の物語のうち、やんちゃものの菅原のエピソードは、最後まで読んだ時、改めて深く心に染みてくる。この辺はむちゃくちゃうまい。
でも、やっぱりトータルで見た場合、不満な点の方が多い。謎解きの本格推理を期待した私が悪いのだろうか? 辻村深月はずっと気になる作家だったんだけど、今のところ、他の作品には食指が動かないなぁ。デビュー作だけで判断するのは早計か?