しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

SFマガジン2008.1月号感想

S-Fマガジン 2008年 01月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2008年 01月号 [雑誌]


締切を少し過ぎましたが、SFマガジン2008.1月号の考課表を。推敲なしの走り書きです、ごめんなさい…。


テッド・チャン特集」

※SFM考課表 2008年1月号の全体結果はまだです(後日リンク予定)


待望のテッド・チャン特集。あと10年は新作を邦訳で読めないと思っていたのでうれしいかぎり。あと、例年1月号は翻訳短編の掲載数が少なく不満に思うことが多かったので、その意味でも満足のいく号だったかも。


「商人と錬金術師の門」テッド・チャン +2
「一度確定した過去は、時間旅行による干渉によっても決して改変されることはない(タイムパラドックスなどありえない)」という命題を表した傑作。過去は変わらずとも、過去に対する認識に変化は生じうるとしたアイデアが秀逸。ただ、甘いラストは(感動的とはいえ)少し不満。もっと突き放した冷徹なラストの方がよかったのでは?


「予期される未来」テッド・チャン +2
「未来はすでに確定しており、何人たりともそれに逆らうことはできない」とする、かの名作「あなたの人生の物語」と同じテーマを扱った作品だが、こちらは一片の救いもない絶望的な物語。大森さんも書いてましたが、たった2ページでここまで濃密なテーマを展開し、読む者の心に何かを残すところがテッド・チャンの凄さか。


「ダイノクロム」キース・ローマー +0
置き去りにされた知的戦闘機械といった設定に新味はないが、40年以上前の作品ならばいたしかたないか。でもまあ、面白く読むことはできた。ラスト、古今東西の文学作品とかを頭の中で反芻するくだりは「イリアム」に登場するイオのオルフを少し思い出したり。


「特別大使と夕暮れの会談」セルゲイ・ルキヤネンコ +1
よくある侵略ものかと思いきや、ラスト1ページの予期せぬ事実に驚かされることに。異なる文化を持つ知的生命体との交渉シーンも面白い。


「ライアンの尻尾」江沼エリス +0
二重写し」船戸一人 +0
「セーフセーブ」久道進 +0
3作とも「ハヤカワ・ロボットSFショートショート・コンテスト」の入選作。ロボットをテーマとしつつもバラ色なだけに終始する作品はもちろんなく、どれも悲しみに彩られてるのが特徴か。甲乙付けがたいので全部「+0」としましたが、個人的に好みなのはラストに希望が仄見える「ライアンの尻尾」かな。


「GARBAGE HEADS SF Magazine Gallery[25]」李夏紀 +0
うーん、この細く淡いタッチは好みじゃないです、すみません…。