しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「オリュンポス(上)(下)」ダン・シモンズ(早川書房)★★★★

オリュンポス 上

オリュンポス 上

オリュンポス 下

オリュンポス 下

前作「イリアム」で広げまくった風呂敷を一体どんな風に畳んでいくのかと思いきや、まださらに風呂敷を追加して広げまくりますか(途中、6つのエピソードが同時進行だもんなぁ)。もう破綻してようが何だろうが、おかまいなし。凄いぞ、ダン・シモンズ。

ギリシャ神話の英雄たちと神々の全面戦争が本作のメインで、「イリアム」における3つのエピソードがここに収斂されていくと信じきって読み始めたのに、そんな予想はどこ吹く風。誰がどう見ても「オリュンポス」の白眉は、神々の戦いよりも、古典的人類の活躍の数々でしょう。特にアーディス・ホールを死守すべく、ヴォイニックスと死闘を繰り広げるアーダたちの素晴らしさったら! セテボスの本拠に潜入するディーマンや、モイラと邂逅するハーマンの物語も面白く、古典的人類が主役のこの3つのエピソードだけでも大満足。まあ、セテボスやキャリバンとの戦いはちょっと消化不良でしたが(続編への布石?)

他にも、恋の秘薬でペンテシレイアにぞっこんのおバカなアキレウスとか、おなじみイオのオルフとマーンムートの掛け合い漫才とか、オリュンポスとイリアムと地球のあっと驚く関係性とか、もう次から次へとネタ満載で、とどめは圧倒的に優勢だったイリアムが一瞬で「陥落」したその真相(笑)

いや〜、あまりに長くてちょっとだれるし、話が拡散したまま解決してないとこもあるけど、最後、あまりにハリウッド映画的な大団円を演出してくれたからよしとしますか。