しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「ひとり日和」青山七恵(河出書房新社)★★★☆

ひとり日和

ひとり日和

第136回芥川賞受賞作。ネット界隈ではあまり評判よくないみたいだけど、私はけっこう気に入りました。これ、村上龍石原慎太郎が大絶賛っていう評価で損してると思う…。
東京の小さな町の駅のそば。突然、親戚のおばあさん(吟子さん)と二人暮らしすることになったフリーターの知寿(ちづ)。自分の行く末に漠然とした不安を抱き、付き合ってる男性からはいつのまにか捨てられることの繰り返し。正直言って主人公に魅力はないんだけど、深く物事を考えず日々流されている今風の若い女性のささやかな心の揺らぎと小さな決意を作者は上手に描いている。

そして、この小説の評価ポイントは何と言っても吟子さん。齢七十を超えた普通のお婆ちゃんなんだけど、飄々としつつも恋をしたりと前向きで、知寿のことも変に干渉したりせずにそっと見守ってくれている。あ、今気付いたけど、これって知寿と吟子さんの歳の差を超えた淡い友情の物語でもあるんですよね。二人の別れには少しホロッとするし。

というわけで、芥川賞に値するかどうかというと疑問だけど、物語自体は私好みでした。デビュー作の「窓の灯」も読んでみよう。(評価:★★★☆)