しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「ゆれる」


観終わって呆然自失でした…。間違いなく2006年の邦画ナンバー1でしょう。いや、日本の映画史上に間違いなく残る傑作。緊迫感に満ちた映像と物語に目を離すことが出来ず、2時間食い入るようにスクリーンを見つめ続けました。

親の跡を継いで地方都市のガソリンスタンドを営む兄と、東京に出てカメラマンとして成功した弟。離れていても心は結びついていると信じていた兄弟は、兄が犯した事件を機に、互いの心の裡に巣食う本当の気持ちに気付き、やがて少しずつ心が毀れていく…。過剰なセリフや説明、大げさな演技に頼るのではなく、ふとした仕草や無表情ともいえる表情、何気ない言葉によって、心の裡、心の闇、心の揺れ動く様をつぶさに表現してみせるオダギリジョー香川照之のなんとすごいことよ。特に香川照之の抑制の効いた演技の凄絶さには、只々圧倒されるばかりで、アカデミー賞級と言っても過言ではない素晴らしさでした。

説明やストーリーの進行に頼るのではなく、役者の表情や演技だけですべてを語り観客の心に訴えることのできる映画、そんな「映画でしか(映像でしか)表現できないもの」こそが優れた映画なのだと改めて気付かせてくれた作品でした。文句なしの100点満点です。