しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

SFマガジン2007.2月号感想

「日本作家特集」

SFM考課表 2007年2月号の結果はこちら


2月号恒例の日本作家特集なんだけど、年に一度の特集の割には小粒感が拭えず…。これ読んで今の日本のSFシーンを垣間見ることができるかというと、うーん…。


「盗まれた昨日」小林泰三 +1
人間としての本質は「記憶」や「意識」にあるのか、それとも肉体としての脳こそが人格の主体なのかという疑問を投げかける好編。短期記憶がなくなった世界という設定、適度にサスペンスフルな展開も悪くない。ラスト、「自分」のメモリを「彼女」の身体に入れ「彼女」として生きるという誘惑にほんの一瞬も駆られなかった点が少し不自然か。


「羊山羊」田中哲弥 +0
疫病としての「羊山羊」にまつわるアイデアやネタよりも、「羊山羊」という予期せぬことが原因で浮気がバレてしまい、家庭が崩壊していくドタバタぶりが面白かった。中盤までと打って変わったシリアスで重いラストは賛否両論あると思うが、私はこれはこれでありかな、と。


「陽根流離譚」森奈津子 -1
森奈津子の作品で男性器型宇宙人が登場して舞台はジェンダー研究会で…って聞くだけで、激しく既視感感じて読む意欲減退。なんか「あぁ、またですか…」って感じ。森奈津子を初めて読むなら面白いかもしれないが、そうでなければインパクトも弱い。宇宙人の生態など特殊な男女の役割もジェンダーSFとしては突っ込み不足で不満。


「口紅桜」藤田雅矢 +0
鬼の邪気に侵されていく名木「口紅桜」を樹医として治療する藤珠。スーパーナチュラルな要素が少ないのが残念だが、樹の治療に真摯に立ち向かう物語は悪くはない。


「避難所」スティーヴン・バクスター +0
フェルミパラドックスに対する回答なんだけど、いやぁ、よく考えたらすごいネタだな(笑) ただ、途轍もなく大風呂敷を広げた割には、その回答に面白みがないのが難点か。魚さんも書いてたが、本編にあたる「マニフォールド」シリーズを激しく読みたいので、今回の番外編掲載は訳書出版の前哨戦だと信じたいのだが…。