しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」(創元推理文庫)★★★☆


春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。 (amazon紹介文より)

先日、6/17に同志社大学で開催された米澤穂信講演会に参加できなかったので、せめて本だけでも読まねば…と思って読んだ一冊(…はい、白状します…。米澤さんの本って一冊も読んだことなかったんですよね…)。

噂どおり、日常のささいな謎を主人公の二人が解き明かすライトミステリ。正直言って、あまりにライトすぎるため、ミステリとしての面白さは「すごい」とまではいかないのですが(とはいえ「おいしいココアの作り方」や「For your eyes only」はまあまあ面白かった)、お互い小市民を目指して助け合う小鳩君と小山内さんの不思議な関係が面白くて、「何でこの2人はここまでして小市民を目指すの? どんなきっかけで2人は互恵関係を結ぶことになったの?」っていった興味から、くいくい読まされてしまいました。青春学園ミステリ(?)としてもよく出来てるし、小鳩君、小山内さんといった「少しいや〜な性格のキャラ」も不思議と魅力的だし(笑)

短編一作ごとに少しずつ二人の過去が提示されていく…といった構成が連作ものとしてよく出来ていて、そういった意味から言えば、個々の短編の謎解きよりもむしろ、連作全編を通しての「小鳩君と小山内さん」の謎解きといった視点で読んだ方が楽しめる作品だと思いました。

でもって、その小鳩君と小山内さんの謎ですが、小鳩君の過去は最後で片鱗を垣間見れたものの、小山内さんの過去は依然としてほとんど謎のまま。この辺の謎を解き明かすためにも続編の「夏期限定トロピカルパフェ事件」も読まないといけないようです。(氷菓…じゃなくて、評価:★★★☆)