しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

SFマガジン2006.1月号感想


レイ・ブラッドベリ特集」

私は、新年号恒例の作家特集があまり好きではなく(理由は、いつも掲載短編が少ないため)、今回も短編がひとつだけというのは大いに不満なんだけど、かわりにエッセイ・セレクション、インタビュウ、年譜がどれも素晴らしく、特にエッセイについては「ネズミの生みの親」で感動し「飛行の女神ヒステリー、あるいは離陸時に通路を叫びながら走らないでください」で大笑いし…と、とても楽しく読むことができた。これら5篇が収録された"Bradbury Speaks"は、どこでもいいからぜひ翻訳し出版してほしい(無理かな…)。

気に入ってはいるんだけど、十分に理解できているのか自信がないので、採点は+0に。上にも書いたけど、せめて特集作家の短編は少なくとも2編くらい載せられないものか?

  • 「人鳥たち」マイクル・G・コーニイ -1

シニカルで面白いけど、SFとしてはどうよ?と思う。たまたまコーニイが亡くなったタイミングで掲載されたため、追悼として意味あるものになってるけど、そうじゃなかったら、わざわざ20年前も前の作品を発掘してきてセレクションとして掲載するほどのものかと思うのだが…。

この作品に「+1」付けてるのって、たぶん私だけだろうなぁ。前作「野天の人」にも「+1」を付けたけど、この作者の作品が醸し出す独特の雰囲気はかなり好み。主人公と彼女の何気ないやりとりが、なぜか現実から微妙にずれた違和感を生み出しており、それが「非日常な空間」を作り上げている。唯一の難点は、情報伝達物質とか、政府による監視とか、変にSF的な設定を持ち込んでいるところ。うーん、何だかこうした当たり前のガジェットを用いることによって、平山瑞穂が描き出す純粋に不可思議な世界に不純物が混じってしまうように感じるのは私だけか。ところで、前作「野天の人」はリアルフィクションだったみたいだけど、やっぱりこれもリアルフィクション?(…というか「野天の人」よりこっちの方が、よっぽどリアルフィクションだと思う)