しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

沼田まほかる「九月が永遠に続けば」(新潮社)

沼田まほかるの「まほかる」っていう名前、ずいぶん変わった名前だなぁーとずっと思ってまして、冗談でチャットとかで「漢字だと『魔法軽』って書くに違いない」とか言って盛り上がってましたが、当たらずとも遠からずだったみたい(笑)
なんでも、作者がダイアナ・W・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」が好きで、ここから名前を取ったそうな。「魔法使いハウルと火の悪魔カルシファー)」で「魔法カル(まほかる)」だって(大笑)


…というのは、もちろん嘘です。だって、エイプリルフールの次の日だし(次の日はダメだって!)

九月が永遠に続けば

九月が永遠に続けば

第5回サスペンスホラー大賞受賞作。息苦しくなるほど濃密な文体は、とても新人とは思えないほど。ある日突然失踪した息子を母は狂ったように捜すが、そのうち、別れた夫やその妻と娘、不倫相手の男性、そしていなくなった息子の複雑で凄絶な関係がじわじわ〜とつまびらかにされてくるさまが、もう、この作者の粘りつくような文体とすごくマッチしてるのだ。
とにかく徹底して救いのない話はすごくて、ここまでぐちゃぐちゃの人間関係って、ちょっとやりすぎとちゃうの?って思うほど。誰かも書いてたけど、桐野夏生に近いものを感じますね。
それにしても、これってサスペンスというよりも、どろどろ愛憎劇といった方がいいような気が。ラストがちょっと気に入らないけど、次の作品が出たら必ず読もうと思わせる力量は期待度大。(評価:★★★★)