しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

三谷幸喜脚本・演出「なにわバタフライ」


…というわけで、今年最初の観劇は*1三谷幸喜作・演出、戸田恵子主演の一人芝居「なにわバタフライ」。2月の第1週にチケット1枚を無駄にしたのも何のその、再びチケットをゲットして、2/9(水)に梅田のシアタードラマシティに観に行ってきました*2


いやー、期待以上の面白さ! 一人芝居でだれずに2時間以上も保つのかなぁとちょっと心配してたんですが、思いっきり杞憂でした。このお話、ミヤコ蝶々の半生をモデルに、7歳の頃から芝居の道に入り、2度の結婚に破れ、傷つくのを恐れながらも精一杯芝居一筋に生きてきた女性が、楽屋で記者に自分の人生を面白おかしく(そして哀しく)語るという物語。


この一人芝居がとにかくすごいのは、一人芝居によくありがちな独白調で主人公が語り続けるというスタイル(例「そして私は、何々をしたのです…」)でもなく、はたまた、実際には舞台上にいない相手役のセリフを反復しながら情景を描くタイプでもなく(例「へえ、そうなの。駅に向かおうとした時に忘れ物に気が付いて家に戻った…っていうことね」)、たまたま他の役者さんたちが透明人間で声も聞こえないだけの普通の会話劇…って感じの脚本である点。だから戸田さんと姿の見えない相手役との掛け合いを見ても、観客である私たちには戸田さんが言ったセリフしか聞こえないし、相手の姿も反応も見えない。でも三谷さんは、この「相手のセリフが聞こえない」「相手の姿が見えない」という特殊条件を逆手にとって、観客に類推させることで笑いや涙を誘うという離れ業を成し遂げてるんですよねー。


そしてそして、さらにすごいことに、物語が進むにつれて、これらの見えない相手役たち(主人公がかつて恋した5人の男性たち)のキャラがどんどん立ってきて(!)、最後のカーテンコールには全員がひとりずつ舞台に「登場」して、観客である我々は拍手喝采! 「一人芝居の仮想の相手役がカーテンコールで拍手を浴びるってどういうこと?」と思われるかもしれませんが、これはとにかく見てもらわないと説明しても実感してもらえないと思います。一人芝居でなければ絶対に成立しないこんな脚本を書いた三谷幸喜は、やっぱり天才だわ〜。


あと、特筆すべきは戸田恵子の演技力。上記の脚本も下手な役者がやったら台無しだけど、戸田恵子、とにかくうまい。人形とか玉暖簾とかガムテープとかあらゆるものを駆使して衣装の早変わりをし(そのたびにみんな大爆笑)、小気味良いテンポと派手な動きで観客をぐいぐい引っ張って笑いを取りまくり、要所要所でしんみりさせ哀しい女の姿も垣間見せる…。いやー、もともと好きな女優ですが、さらに見直しました。


ほんと、あっというまの2時間10分、最後はスタンディングオベーションもいっぱい見られ、割れんばかりの拍手の中、幕を閉じました。あー、DVDで出ないかなぁ。

*1:本当は、1/13(木)に劇団☆新感線の「SHIROH」を観に行くつもりだったのですが、id:kinakosakuraさんがあまり評価してなかったので、当日になって「当日券GETで観劇」計画を急遽取りやめたんですよねー。

*2:よくよく考えたら、サッカーの日本vs北朝鮮の日を選んだのはミスだった…