しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

2008年に読んだ本ベスト5

さて、2008年に読んだ本は75冊。うち小説が50冊、小説以外が25冊。
忙しい毎日、基本的に通勤時間のみの読書としてはまずまずかな。でも、この何倍も買ってるから積読率が…。


でもって、2008年に読んだ本ベスト5は次のとおり。

1.「贖罪」イアン・マキューアン新潮文庫
2.「氷」アンナ・カヴァン(サンリオSF文庫) →感想
3.「オン・ザ・ロードジャック・ケルアック河出書房新社) →感想
4.「黄色い雨」フリオ・リャマサーレス(ヴィレッジブックス) →感想
5.「密会」ウィリアム・トレヴァー(新潮クレスト・ブックス) →感想

次点「石のハート」レナーテ・ドレスタイン(新潮クレスト・ブックス) →感想


…とてもSF&ミステリ読みとは思えない結果だ(苦笑)

やはり去年読んだ中では「贖罪」が断トツでしたね。ラスト間際、それまでの物語世界が一瞬で崩壊し、その後に襲いかかる深い絶望と哀しみの凄まじさたるや…。オールタイムベスト級の傑作でした。
今年もSFやミステリを読みつつも、嗜好は世界文学寄りの読書となりそうです。

「SFファン交流会」初参加

先週の土曜(11/15)は出張帰りに東京に寄り道して、念願の「SFファン交流会」に初参加。
今回のテーマは「ハードSFなんて怖くない」。「状況設定は超越科学、問題解決は現代科学というのがハードSFとしてバランスがいい」という林哲矢さんの言葉にはなるほどと思ったり。ハードSFと本格SFの違いをどう見極めるのかが今後の課題か(いや、別に見極めなきゃいけないってこともないんですが)。この分野は苦手なのでいろいろ勉強になったかも。でも一番勉強になったのは(ハードSFとは全然関係ない)カール・シュレイダーの巨大サンタの話だったりする(笑)

京フェス以来の方々と再会し交流できたのも楽しかったですね〜。SFえんじさんと知り合えたのも今回の成果。2次会ではえんじさん、もくようさん、カズさんと喋りまくってて時間を忘れるほど。帰阪のため途中退席しなきゃいけなかったのがうしろ髪引かれる思いでした…。今度は土曜泊まりの時に参加したいなぁ。

なかなか東京まで行けませんが、機会を見つけてまた参加したいと思います。みいめさん、fuchi-komaさん、ほかスタッフのみなさん、ありがとうございました。

ちなみに上の写真は「羊頭書房」で手に入れたSFマガジン創刊号。今回の東京行きで買った古本はこの1冊だけ…。「十五時の犬」で以前から探してるサンリオSF文庫をいっぱい見つけましたが、あの値段ではとても手が出ませんでしたわ…。

「華氏四五一度」の新装版って…

「華氏四五一度」の新装版って、ハヤカワ文庫NVじゃなくて、ハヤカワ文庫SFなのか。

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

書店で見たけど、長年NVの背表紙に慣れ親しんでるせいか、青背ブラッドベリに激しい違和感が。
こんな風に、ハヤカワ文庫の中でレーベル移動するっていうのはかなり珍しいんだけど*1、何でこんなことしたんだろ? NVで出すより青背の方が売れやすいってこと?

あ、今気付いたけど、タイトルは「華氏四五一度」じゃなくて、いつの間にやら「華氏451度」になっちゃってるのね…。それにしても、この表紙はイマイチだなぁ…。

*1:イタロ・カルヴィーノの「レ・コスミコミケ」がハヤカワ文庫SFからハヤカワepi文庫へ、ミステリアス・プレス文庫の人気作品(アーロン・エルキンズのスケルトン探偵シリーズとか)がハヤカワミステリ文庫へ…っていう例もありますが、「この作家はこのレーベル」と決め付けたがる早川では極めて異例だと思う。

舞美の好きな作家、愛理の好きな作家

こちら参照のこと → http://2ch.wota.jp/images/i/136000/136309.jpg


舞美*1の好きな作家は乙一!(えらいっ(^^)v 

愛理*2の好きな作家は山田悠介…(あらららら〜(^o^;


あー、舞美推しでよかったと思った瞬間でしたわ〜(笑)

「20世紀の幽霊たち」ジョー・ヒル

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

★★★★☆

噂に違わぬ傑作。これはいいぞ。昔ながらの怪奇小説でもなく、またキングに代表されるようなモダンホラーでもない。しいて言えば「限りなく普通小説の肌触りを持った異色短編」ってとこか。友情や愛情を描いた秀作が多く含まれてるし、スーパーナチュラルな要素がまったくない作品もあるし。

個々の作品については語られ尽くされてるので詳しくは書かないけど、私が特に気に入ってるのは、ホラー小説のアンソロジストが遭遇する恐怖を描いた正統派ホラー「年間ホラー傑作選」、風船人間という奇病の友人との心温まる友情物語「ポップ・アート」、ゾンビ映画のエキストラとして再会した元カップルが前向きに人生を歩み始める再生の物語「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」、サヴァン症候群の弟が創造した巨大オブジェがそこはかとなく恐ろしい「自発的入院」の4作。他の作品も秀作ぞろいだけど、私としてはこの4作が飛び抜けてると思う。

なかでも、すごいのは「ポップ・アート」。普通だったらただのトンデモ小説になりかねないところを(だって、奇病で身体がどこにでもあるビニールでペラペラの風船人形になっちゃうという…)、哀切感漂う友情物語に昇華させたこの作品はオールタイムベスト級の素晴らしさ。もう、この作品だけのためにこの本を買っても損はなし!
「ボビー・コンロイ〜」も、「ゾンビ」の撮影現場で元カップルが死人のメイクをして再会するという異常な設定さえ除けばごく普通の小説なんだけど、人生に行き詰まりを感じた二人がゾンビの撮影という異常なシチュエーションを通して再び希望を見出すに到るそのストーリーテリングたるや!(彼女の心の変化が唐突すぎるのがやや難だけど)

作者はスティーブン・キングの実の息子らしいが、そんな肩書きがかえって邪魔とも言えるこの作者、今後も要チェックだ。まずは既刊の「ハートシェイプト・ボックス」を読まねば。


最後に考課表も書いておこうっと(-3点から+3点まで)。
普通、考課表に小数点以下はないんだけど、それだと細かいニュアンスが伝わらないので今回だけ特例ということで。

「謝辞」(なんで謝辞の考課表?と思った人。読めばわかります) +0
「年間ホラー傑作選」 +2.5
「二十世紀の幽霊」 +2
「ポップ・アート」 +3
「蝗の歌をきくがよい」 -1
アブラハムの息子たち」 +1.5
「うちよりここのほうが」 +1
「黒電話」 +1
「狭殺」 +1.5
「マント」 +0
「末期の吐息」 +0
「死樹」 +0
寡婦の朝食」 +0
「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」 +2.5
「おとうさんの仮面」 +2
「自発的入院」 +2.5
「救われしもの」 +1