しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「黄色い雨」フリオ・リャマサーレス

黄色い雨

黄色い雨


★★★★

「石のハート」といい、この「黄色い雨」といい、なんか人がたくさん死ぬ暗い外国文学ばかり読んでるような気が…。

一人また一人と去っていき、朽ち果て滅びゆくスペインのとある小さな村。極寒に震え、食料も尽き、最愛の妻さえも凄惨な死によって失い、絶望的な孤独に苛まれる主人公。
冒頭の早い段階でこの主人公の死が明かされるんだけど、死体となり横たわったまま朽ち果てていく彼の視点(?)で過去の物語が語り続けられる手法が、凄絶なストーリーに一種寓話めいた不思議な印象を与えてくれる。

凍てつく寒さ、深い雪、そしてしんしんと降り積もる「黄色い雨」…。静謐な情景が目に浮かび、絶望に彩られた悲惨で暗い物語にもかかわらず、物語全体の印象は限りなく静かで、そして美しい。うーん、素晴らしすぎる…。

リャマサーレスは、新刊の「狼たちの月」が各所で絶賛されているので「まずは前作から読もう」と軽い気持ちで手に取ったんだけど、予想以上の感動を味わうことができて大満足。「黄色い雨」よりも評価の高い「狼たちの月」を読むのが、今から楽しみかも。