しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

SFマガジン2007.3月号感想

S-Fマガジン 2007年 03月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2007年 03月号 [雑誌]

「2006年度・英米SF受賞作特集」

※SFM考課表 2007年3月号の結果はまだです(後日リンク予定)


3月号恒例の英米SF受賞作特集。今では1年で一番楽しみな号だ。神のようにレベルの高かった昨年の特集号の水準はクリアできなかったものの(当たり前)、今回もそれなりに楽しむことができて満足。「SFマガジン読者賞」の結果については散々語りつくされてると思うのでパス。


「カロリーマン」パオロ・バチガルピ +1
化石燃料がなくなった世界の動力がすべてゼンマイという基本設定が面白すぎ。で、ゼンマイをガンガン巻いてくれる大型獣メガドントの運動源である遺伝子組み換え作物をバイオ企業が牛耳っていて…って発想もなかなか。冷静に考えたら綻びがいっぱい見つかりそうなバカ設定にもかかわらず、第三世界風な舞台において緻密な描写を重ねることにより、独特の雰囲気を持つ一つの世界を構築するまでに到っている。ラストにもう少しひねりがあると+2だったのだが惜しい。


「トゥク・トゥク・トゥク」デイヴィッド・D・レヴァイン +0
東欧革命まっさかりの時期に、個人旅行でリュック背負ってチェコとかハンガリーを旅してた時の、異文化真っ只中で孤独と絶望に苛まれてた時を思わず思い出してしまった…。主人公がじわじわと絶望的な状況に落ち込んでいくさまがあまりにも救いがなくて…そこがいい(笑) ただ、2005年に書かれた作品らしい新しさがあるかと言うとちょっと疑問が…。


「I:ロボット」コリイ・ドクトロウ +0
ロボット工学三原則を嫌いユーラシアに亡命した母親を慕って家出した娘を、頭の固い警官の父親が探しまくる話。さくさく読めて面白いけど、取り立てて新味なし。