「“文学少女”と死にたがりの道化」野村美月（ファミ通文庫）★★★☆

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

本のページを破って食べる妖怪・天野遠子と、元「謎の覆面美少女作家」（実は男(笑)）の井上心葉。二人きりの文芸部員である彼らが、弓道部の先輩への秘めた恋に悩むキャピキャピ少女・竹田千愛の恋文代筆を請け負ったのはいいんだけど、やがて、いつも恋文を受け取っているはずの先輩について驚くべき事実が明らかとなり、そして…。

ラノベと思って軽い気持ちで読み始めたんだけど、思ってた以上にテーマが重くて読み応えがあり、うれしい誤算。ただ「心の内を隠し、偽りの自分を演じ続けることの苦しさ」ってのがあまりにストレートに読み手にビシビシ伝わってきすぎて、読んでて痛々しくちょっとつらかったかも。でもまあ、本好きとしては、文学作品を文字通り「味わい深く」表現する遠子の薀蓄は読んでて楽しいし、キャラも立ってて面白いので、このあとの続編も読んでいくつもり。

ただ、ちょっと気になったこともひとつだけありまして…。この作品って、遠子を「本を食べる妖怪」って設定に無理にしなくてもよかったのでは？　いや、確かに面白いし掴みはＯＫなんですけど、普通の文学オタクの少女って設定でもこの物語は成立しちゃうよなぁ…ってちょっと思ったもので…。（評価：★★★☆）