しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「鴨川ホルモー」万城目学(産業編集センター)★★★☆


2007年の2冊目はこれ!


鴨川ホルモー

鴨川ホルモー


京都を舞台に大学生たちが繰り広げるホルモーのお話 … なんだけど、ホルモーっていったい何?(笑)


京大に晴れて入学し、京都三大祭の一つ「葵祭」にエキストラで参加した安倍は、得体の知れない「京大青龍会」なるヤクザみたいな名前のサークルから新歓ビラを手渡されずるずると引き込まれていくんだけど、やれコンパだキャンプだと遊んでばかりでいつまでたっても何をやるサークルかさっぱりわからない。
読者は冒頭で「なんかホルモーっていう競技を戦う物語みたい」って情報だけは与えられているものの、それ以上のことは皆目わからず、主人公たちといっしょに疑問符の嵐のままページを繰っていくんだけど、このじわじわと謎が解けていくストーリー運びが新人とは思えないほどうまい。「だからホルモーって何なの!?」って答を知るまでは絶対に読むのやめられませんから!


でもって、やがてホルモーとは何ぞや?ってのがわかる瞬間が来るんですが…


ええーっ!!
まさか、こんな話だとは夢にも思わなかったよ!!!
…っていうか、こんなジャンルだとさえもかけらも思いませんでしたわ…!!!


これほど当初予想とは違った内容だった本ってのも珍しいかも…。



う〜ん、もうこれ以上書くとネタバレになっちゃうから、気になって仕方ない方はぜひ読んで下さいませ。読む前は京都を舞台にした学生たちのユーモア溢れる青春もの…ってくらいにしか思ってなかったんだけど、まあ、ネタバレにならないギリギリラインで言うと、ホルモーを戦うなかである時は友情を育み、ある時は敵対し、さらには恋の煩悩に悶々とし、でも最後には互いの絆を深めていく「青春○○もの」の佳作ってところでしょうか? 「本の雑誌」の2006年度年間ベスト10 第9位、紀伊國屋書店の書店員が選ぶ「キノベス」ではなんと第2位というのも納得の面白さ。いや〜、ほんと、この作品は思いっきりツボでしたわ。もう、読んでて面白くって仕方がない。


ところでこの作品、第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作なんですが、普通の賞と違って応募の時にエントリー料がいるみたいで、これって賞と自費出版の中間みたいなイメージ? でもまあ、そんな中からこんなに面白い作品が出てくるんだから侮れない。第1回からの状況を見てると次作が出るのか微妙ですが、できたら他の作品も読んでみたいですね。(評価:★★★☆)