「移動都市」フィリップ・リーヴ(創元SF文庫)★★★☆
- 作者: フィリップ・リーヴ,安野玲
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/09/30
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (70件) を見る
都市そのものが移動し、互いに文字通り食うか食われるかの熾烈な生存競争に明け暮れる荒廃した未来世界を舞台に、移動都市ロンドンが抱く世界征服の野望に果敢に立ち向かう少年と少女の冒険物語。
いやぁ、噂どおり面白かった。巨大都市が自ら動くというトンデモ設定のSFでは、私が読んだ中ではプリースト「逆転世界」(→感想)、M・M・スミス「スペアーズ」(→感想)と並んで御三家確定。設定はぶっ飛んでるけどストーリー展開はほぼ健全なジュブナイルで、みんなも言ってるようにまさに宮崎駿アニメの世界。もう、読んでて映像が頭に浮かぶ、浮かぶ(笑)
主人公でロンドンのギルド見習いの孤児・トムと、顔に醜い傷を持ち復讐に燃える謎の少女・へスターが、最初は反発しあっていたのに命がけの冒険を通してしだいに心を通い合わせていくところが、思いっきりベタなんだけどすごくいい。読んでて暖かい気持ちにさせられます。ツンデレ好きの人はヘスターに萌えるかも。
ラストに向かってのスペクタクルな展開は一気読みの面白さだし、脇を固めるキャラはみんな魅力的だし、まあ癖がなさすぎるあまりに正攻法なストーリーに少し物足りなさも感じますが、新人の第1作とは思えない出来なのでシリーズ第2弾にも期待したいと思います。(評価:★★★☆)