しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「かもめ食堂」

mikage_H2006-06-21


かもめ食堂

公式サイト→http://www.kamome-movie.com/

フィンランドのとある街角にひっそりと店を開いている「かもめ食堂」。
開店後1ヶ月以上経っても誰一人お客がやってこないお店で、いつものごとく食器磨きに精を出すサチエの元に、初めてのお客(日本かぶれのオタク青年)がやってきて「ガッチャマンの歌詞を教えてほしい」と言ったことがきっかけとなり、「かもめ食堂」にいろんな人が少しずつ集まってきます。傷心旅行でフィンランドにやってきたミドリ、旅行かばんがどこかに行ってしまったマサコ、そして、なんだかやばい感じの男性や、危ない感じの女性まで…。
やがて、しっかりもののサチエを中心に「かもめ食堂」は、とってもとってもゆっくりとではありますが、なじみのお客さんが増えていく。
この映画は、そんな映画。


これといった事件が起こるわけでもなく、物語は淡々と進んでいくだけなのに、それが何とも心地良く、いつまでも終わらないでいてほしいと思える映画です。観ていて、自然と笑顔になってしまう、そんな心優しい気持ちにしてくれる、本当に楽しくて観終わったあとしみじみと「よかったなぁ」と思える、そんな稀有な映画でした。


ちなみにこの映画、主演が超実力派の三人(小林聡美片桐はいりもたいまさこ)だからこそ成り立つ映画ですね。こういう「何でもない演技」で観る者を魅きつけ続けるのは本当に難しいですから。
特に小林聡美の演技は、さりげないけど凛とした気高さを感じさせて絶品。キネマ旬報ベスト10の主演女優賞とか取れるかも。これ、他の女優だったら失敗してるでしょうね。というか、小林聡美じゃなかったら、作品そのものが成立してないと思います。片桐はいりの純朴さ、もたいまさこの不思議さと見事に調和が取れてて、本当に素晴らしいんですよ。う〜ん、これはいくら説明しても観なきゃ絶対伝わらないので、派手じゃないけどいい映画を観たいという人はぜひ観てみて下さいね。今のとこ、今年観た邦画の中では「間宮兄弟」と1位を争ってます。採点は90点ってところですね。


付記)上の写真は「かもめ食堂」のパンフレット。かばんの形になってて、かばんを開くと中身がパンフレットになってるんですよね。紐で緑のネームタグまで付いてて(写真でわかるかなぁ)、ほんとに洒落ててうれしくなってきます。