しゃんぶろう通信

姫川みかげ です。ミステリやSFの感想など。

「京都SFフェスティバル2008」参加レポート

京都SFフェスティバル2008 → http://kyo-fes.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/Kyo_fes/wiki.cgi

10/11〜10/12にかけて、2年ぶりに京フェスに参加(昨年は体調不良で断念)。いつものように、まよさん、ばにゃんの2人と会場へ。

[本会企画]

1コマ目…じゃなくて1限目「眉村卓インタビュー」(眉村卓岡本俊弥)(敬称略)
いつものごとく喋り始めると止まらない眉村さん。聞いたことのある話も多かったものの、やはり味があって面白い。第1回SFマガジンコンテスト第2席の「下級アイデアマン」は本命を書き上げたあと時間が余ったのでついでに書いたもの(本命は落選…)だとか、「司政官」第1作「炎と花びら」は「文学的すぎる」ということであまり評判にならなかったとか、ジュブナイルは制約があるので書くのが難しいとよく言われるが自分としては日常に近いため逆に書きやすいとか、いろいろなエピソードを。中学生はタイトルで選ぶということで「なぞの転校生」というダサいタイトルに無理やり替えられたけど、今思うとこの方がよかったのかも…との話も。岡本さん労作のパワーポイントの大半が時間切れで駆け足となったのが残念。

昼食は会場1階のレストラン。ばにゃんはこんなとこまで来て、昼食も食べずにSWのオビ本を買いに洋書屋へ(笑)。昼食時に、あらま草さんのファン交仲間であるカズさん、Y沢さん、もくようさんと知り合えたのが大きな収穫。それにしても、京フェスに来て、清涼院流水とか舞城王太郎とか京極夏彦の話ばかりしてる私たちって…(笑)

2限目「新・生命とは何か?」(瀬名秀明円城塔八代嘉美)(敬称略)
生物学的アプローチにSF的な味付けを加えて新たな生命の定義を模索する企画かと思いきや、蓋を開けると「どっちが生命っぽい?」っていうトンデモ的な内容。ローレンツ・アトラクターとレスラー・アトラクター(合ってる?)なるもののどっちが生命っぽい?って聞かれても…。二人の微妙に噛み合わない対談を聞いてて、瀬名さんが普通感覚の秀才であるのに対し、円城さんは思考の階層が異なる異能の天才であることを実感(「わりと」とか「なんとかして」といったフレーズをパワーポイントで見たのは初めてだ)。「生命とは何か」ということより、「生命状態とは何か」という概念についての見解が面白かったかも。生命は行為についている性質であって、ごはんを食べてる時は「生命」を感じないけど、本を読んでるときは感じるとか。人形から人間に近づくにつれて、かわいい状態がピークに達したあと一気に「不気味の谷」を転げ落ち、あとは「動く死体」的な気味悪さ一直線という話も面白かった。あと、阪大の石黒教授そっくりのロボットが許せないとか(笑)

3限目「年刊日本SF傑作選を編む」(大森望日下三蔵小浜徹也)(敬称略)
11月に創元SF文庫から出る、2007年に発表された日本SFのアンソロジーについて、収録作選考の裏話など。大森さんはジュディス・メリルの、日下さんは締切を守らない筒井康隆の役回りだとか。日下さんの「収録作が知れ渡ると、みんな雑誌を探して読んじゃって本が売れないんじゃないか」との杞憂から(そんなことないって…)、mixiやブログには一部のみなら書いてもいいことに(30個くらいサイトを巡回したらパズルのように全貌がわかるとの指摘も(笑))。とりあえず、SFマガジンやSFjapan以外では、恩田陸かんべむさしが入ってることだけ書いておこう。連作短編集は売れてもそれ以外の短篇集は売れないと言われて久しいけど、最近の「奇想コレクション」とかの人気を考えると、バラバラの短篇集でも案外売れるのでは?との意見は確かにそうかも。

4限目「ディッシュ追悼」(樽本周馬柳下毅一郎牧眞司)(敬称略)
柳下さん曰く「ディックは情も知でコントロールしている。「キャンプ・コンセントレーション」では暴走する知性をそのままの形で表現しようとしているところが凄い」とのこと。また、牧さんによると「リスの檻」は、1970年にSFマガジンに発表された当初からニューウェーブの中でもわかりやすい部類だったとか。とりあえず、牧さんと樽本さんの話を聞いて、積読のままの「ビジネスマン」と「M・D」は読もうと思った。それよりも何よりも、この企画最大の収穫は「歌の翼に」が来年頭に国書刊行会からハードカバーで復刊されるというニュース。売れれば「334」とか「キャンプ〜」も出るかも…だそうな。ああ、これで古本屋で探しまくる生活からおさらばできる、うう…。


[合宿企画]

1限目「年刊日本SF傑作選2009年版」(仮)を作ろう」(大森望日下三蔵小浜徹也)(敬称略)
本会と違って、こちらは来年に向けて今年のベストSFを今のうちに推薦しようという企画。でも自分も含め参加者のほとんどが今年発表の単発日本SF短編をあまり読んでいないため(だめじゃん…)、いつしか文芸誌掲載作にSFやファンタジー寄りの作品がないか探り合う企画に。あと、来月出る2008年版のタイトルも決めようとしたものの「至高」とか「羊」とかが頭から離れずグダグダなまま時間切れ。いずれにせよ、今年に入ってからはSFマガジンさえまともに読んでないという自身のていたらくを痛感した企画でしたことよ…。

2限目は企画に出ず、大広間でだらだら(ryokuさん、おいしいシュークリームありがとうございました)。ここでの収穫は、かとうたかしさんやかつきさんと話してて「「新しい太陽の書」を読んだ人がみんな、1回読んだだけですべてをきちんと理解して感動しまくってるわけじゃない」とわかったことだ(…と安心してていいのか?)。

3限目「SFファン交流会十月例会「ぶっとび海外奇想短編に酔う」」(牧眞司大森望、冬蜂)(敬称略)
牧さんがプロパーSF作家限定で、大森さんは制約なしで、冬蜂さんは新しめの作品中心で奇想SFを10編ずつ選び、講評するという企画。ジョー・ヒルで奇想だと私はやっぱり風船人間の「ポップ・アート」かな(「ボビー・コンロイ〜」のラストで、彼女が突然「やります」と豹変したのは私も謎に思ってました)。牧さんがベタ褒めしてた京大SF研の仮想アンソロジーリストを読もうと大広間に行ったら、すでに売り切れ…(6部しかなかったらしい)。どんなラインナップか気になるので増刷をぜひぜひ。

3限目終了後はまたしても大広間でうだうだ。おがわさとし&実駒夫妻の日常夫婦生活ぶりが垣間見れて楽しかった。それにしても、おがわさん秘蔵のダンボール箱に書かれた「まるE(Eの字を○囲み、ね)本」「まるEビデオ」の記号の意味が実駒さんにバレバレだったというガクブル話には笑わせてもらいましたわ(…っていうか、普通わかると思う)。

でもって、翌日は名古屋でモー娘。ライブなので、体力温存のため2時に就寝。SFコンベンションで、こんなに早く寝たのは初めてだ(笑)。

朝起きて、相変わらず味のある実行委員長のクロージングを聞いてお開き。ぞろぞろと行った「からふね屋」が時間がかかりそうだったので、おがわ夫妻、まよさん、あらま草さん、タカアキラさん、Y沢さん、もくようさん、カズさんらと別の店を求めて放浪の旅へ。結局、タクシーに乗って丸太町まで出てロッテリアに。解散したあとは、Y沢さん、もくようさんと新幹線に同乗。ここでも「魍魎の匣」とか「鉄鼠の檻」の話ばかりしてる私たちって…。

とまあ、あっというまの2日間でした。お会いした方、お疲れ様でした。また、お相手して下さった方、ありがとうございました。では、次はファン交かセミナーで。